君の聲

 遠くで聞こえる私を呼ぶ声に、ぼやけた意識で薄く瞼を開いた。

これまで何千万回、君に呼ばれただろう。
喜んだ時、怒った時、哀しい時、楽しい時。
いくつもの苦しみ、幸せを共に過ごした君。

その顔がぼやけて良く見えないのだが、きっとに眉を八文字にして泣いているのだろう。

「●●くん」

微かに聞こえる私の名前。
いい歳をしたおじいちゃんに「くんづけ」はないよな……。

私の頬に君への想いがつたったとき
「あり…がと……」
と、ことばがこぼれた。

だんだんおちていくまぶた。

とおざかるきみのこえをききながら、わたしはつぎにまぶたをひらいたときも
きみにあえるよういのった。


2020/9/26 エブリスタへ投稿